| 震災鎮魂と日々の勤行 毎月二十八日は、不動明王のご縁日です。 金剛庵では、この日を特別な一日と位置づけ、 ご本尊・不動明王の御前において秘密修法を厳修しております。 不動明王は、大日如来の慈悲が怒りの姿となって現れた仏尊です。 その憤怒のお姿は、人を恐れさせるためではありません。 私たちの迷いや執着、苦しみを断ち切り、 正しい道へ導くための大いなる慈悲の表れなのです。 金剛庵がある宮城県は、 東日本大震災という未曾有の災害を経験しました。 あの日、多くの尊い命が失われ、 多くの方が大切な家族や故郷を失いました。 そして十五年以上が過ぎた今もなお、 その悲しみや記憶は決して消えるものではありません。 だからこそ金剛庵では、不動明王ご縁日の修法において、 震災で亡くなられたすべての御霊への 鎮魂回向を欠かすことなくお勤めしております。 私は震災直後から被災地での支援活動にも携わってまいりました。 その経験を通じて強く感じたのは、 人の心だけではなく、 土地にもまた深い記憶が刻まれているということです。 密教では、大地も山も川も、 この世界のすべてが仏の生命の現れであると説きます。 だからこそ、土地を慰め、人を慰め、 亡き方々へ祈りを届けることは、 未来を生きる私たち自身の心を整えることにもつながるのです。 そして、不動明王への祈りは、ご縁日だけのものではありません。 金剛庵では毎朝・毎夕、ご本尊不動明王へ勤行を捧げています。 日々の勤行は、特別な願い事をするためだけではありません。 自らの心を見つめ、感謝を忘れず、 煩悩に流されないように自分自身を整える時間でもあります。 人生には、思い通りにならないことが数多くあります。 病気、人間関係、仕事、災害、不安や迷い…。 そのような時こそ、不動明王は 「恐れるな、前へ進め」と静かに背中を押してくださいます。 炎は煩悩を焼き尽くし、剣は迷いを断ち切り、 羂索は救うべき人を決して見捨てない慈悲の象徴です。 金剛庵では、これからも毎日の勤行を大切にし、 ご縁日の修法を通じて、 一人ひとりの息災、家内安全、心願成就、 そして東日本大震災で亡くなられた すべての御霊への鎮魂を祈り続けてまいります。 どのような時代であっても、祈りの火を絶やさないこと。 それが、不動明王をご本尊としてお祀りする 金剛庵の変わることのない願いです。 合掌。 真言密教役宝派 管長 修験道場大慈山金剛庵 庵主 江湖源生拝 |
不動明王ご縁日に寄せて


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